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みなさまこんにちは。
ハナコです。



ハロウィンが終わり、オレンジと黒のディスプレーがまるで「引き潮」のように撤退したばかりのロンドンです。そして「さて待ってました!」とばかりに、いよいよクリスマスシーズンが到来しました。

とはいえ、ハロウィン用のお菓子や装飾と一緒に、10月からクリスマス関連の品々の販売は始まっています。クリスマスの定番ケーキ「ミンスパイ」、プラスチック製のツリー等が店頭に並び始める時期は年々早くなっているような気がします。


クリスマスの定番、ミンスパイ。

さて年末年始は日本人にとって長くお休みが取れる時期ですよね。この時期に旅行でイギリス/ロンドンにいらっしゃる方は多いと思います。

残念ながらクリスマス(特に25日は何もかもが閉館・閉店してます)は旅行者にとっては行くところに困る辛い日なのですが、最近はその辺も少しずつ変化してきております。24日は開いているお店も多くなり、12月26日から恒例の「冬の大バーゲン」が始まるのでクリスマス以降→年末年始のロンドンはなかなか楽しいのです。

旅行に行くとホテルで取る朝食はお国柄が出るものの1つであり、楽しみにしている方も多いと思います。イギリスといえばボリュームたっぷりの「イングリッシュ・ブレックファースト」が有名ですね。Potencyで連載を始めて今回で31回目の記事なのですが、そういえばまだこのイギリス名物の朝食について書いたことがありませんでした。


↑ベーコン、ソーセージ、卵等、盛りだくさんで知られる「イングリッシュ・ブレックファースト」

そこで今回は体も心も満腹間違いなし!英国名物『イングリッシュ・ブレックファースト』をご紹介いたします!

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「イギリスで美味しいのは朝食だけ」…という話を聞いたことはないですか?

これはイギリス人作家サマセット・モームの「イギリスで美味しい食事がしたければ、1日に3回朝食を取ればいい」という言葉から来たもの、と言われています。


↑サマセット・モーム(1874-1965)

このコラムを書かせていただくようになって以来、「イギリスにも美味しいものはたくさんある!」と言い続けておりますが、うーむ、モームの言葉が正しくない!とは言い切れないところがあるのも真実です。

きちんと探しさえすれば、この国には美味しいものがわんさかあります。特にロンドンのここ10数年の食の成長はめざましいものがあります。でも適当にお店に入ってしまうと、失敗することが多いのも事実です。

しかし「イングリッシュ・ブレックファースト」が失敗することはほとんどありません。絶対、間違いなく、ボリュームたっぷりの美味しい朝食がいただけます。



「イングリッシュ・ブレックファースト」のことをイギリスでは「フル・ブレックファースト(Full Breakfast=たっぷりの朝食)」とも呼びます。イギリスにはスコットランドもウェールズもあり、このボリュームたっぷりの朝食はイングランド(=イングリッシュ)に限ったものではありません。各地方により「定番」には微妙に違いはありますが、どの地方に行っても概ね同じような朝食を楽しむ事が出来ます。

<定番「イングリッシュ・ブレックファースト」とは?>

「これがなくては『イングリッシュ・ブレックファースト』とは呼べない」というような定義がかっちりあるわけではありません。しかし、定番は下記の品々です。「イングリッシュ・ブレックファースト」と呼ぶからにはこの中のいくつかがお皿にのっています。

*ベーコン:イギリスではスモークしていない塩漬け肉のバックベーコン(豚バラとロースの塊をスライスしたもの)をフライパンでソテーしたもの。



*卵:目玉焼き 又はスクランブルドエッグ



*ソーセージ:ひき肉にハーブや小麦粉を混ぜたイギリスのソーセージ。スモークしていないので柔らかい。フライパン又はオーブンでグリルしたもの。



*ベイクドビーンズ:トマト味の甘辛いソース(ケチャップを使用していることが多い)で煮込んだ白インゲン豆。



*グリルド・トマト:輪切りトマトをグリル又はソテーしたもの。



*グリルド・マッシュルーム:マッシュルームをグリル又はソテーしたもの。



*ブラック・プディング:豚の血が入った黒ソーセージ。



*ハッシュド・ブラウン:みじん切り又は細切りにしたポテトを小麦粉と混ぜてパンケーキ状に焼いたもの。



これらのフライ・アップと熱々の紅茶(ミルク入り)と一緒にいただくのが「イングリッシュ・ブレックファースト」です。
※フライ・アップ:Fry-Up、「イングリッシュ・ブレックファースト」の別名。何もかも油で焼いている(=フライ)のでつけられたネーミング。

「7種類のオプションから3種類を選んでオーダー」等、メニューの中からいくつかを選ぶタイプのお店が多いです。ブラック・プディングは好き嫌いがはっきりしている癖のある食材なので、どのお店にもあるわけはありません。

ちなみにイギリスのトーストは、日本の食パンを一回り小さく&薄くしたサイズです。昔ながらのお店ではトースト・スタンドに立ててサーブされます。



日本人に好みが分かれるのはベイクド・ビーンズです。甘じょっぱいトマト味の豆料理、日本人の味覚で特に美味しい!モノではない気がしますが、イギリス人は好きな人が多く、こんな風↓にして食べる人もいるほどです。


賛否両論…。私は好んでは食べません。

<「イングリッシュ・ブレックファースト」の歴史>

イギリスにおけるボリュームたっぷりの朝食の伝統は13世紀ごろまでさかのぼります。「ジェントリー(Gentry)」と呼ばれる、地方貴族層が、自分の館でお客様へのもてなしとして、自分の領地で取れた素材で美味しい朝食を提供していたのが始まりと言われています。

領主たちにとって朝食は自分の土地の豊かさをアピールするための材料の1つでした。客人に地産の美味しい素材でたっぷりの朝食を提供し、その後狩猟などの野外活動に出掛けていたそうです。

ビクトリア時代になると土地に依存してきた地方貴族階級層が没落し、代わりにビジネスで成功したお金持ちの中流・上流階級層が台頭しはじめます。大英帝国の世界制覇、そして産業革命の黎明期、新興リッチ族たちは「イングリッシュ・ブレックファースト」の伝統を受け継ぎ、習慣として根付づかせました。


「朝食を運ぶメイド」Albert Goodwin, 1873年 © Museum of London

当時豪華で美しい器やカトラリーを使った食事は彼らの豊かさを誇示するにはもってこいの素材であったため、お金持ち層の朝食にはこういった美しい磁器のお皿や銀器が使われ、洗練された食事として食卓を彩りました。


「波止場が見える部屋」、James Tissot

しかしここで大きな変化が。産業革命の時代、栄養&ボリュームたっぷりの朝食は、体を使って仕事をする労働者階級にこそ必要なものだったのです。仕事の前にお腹を満たすには最適とあり、「イングリッシュ・ブレックファースト」は広い層に愛される朝食となり、そして国民食として定着していきました。

<「イングリッシュ・ブレックファースト」の現在>

1950年代にはイギリスの一般家庭の朝食として食べられていた「イングリッシュ・ブレックファースト」ですが、その後、人々の生活スタイルの変化により、コーンフレークやヨーグルトと言った軽い朝食が浸透していきます。現在では家庭で日常的に調理して「イングリッシュ・ブレックファースト」を食べることはほとんどありません。

とはいえイギリス人にとって「イングリッシュ・ブレックファースト」は身近な存在であり、好物の1つです。地元民向けに朝早くから開店している食堂や、週末のブランチ用に「イングリッシュ・ブレックファースト」を提供しているカフェやパブはイギリス中にたくさんあります。用意する具材が多いため、現代人にとっては家で作るものではなく「外で食べるもの」になっているのです。



今でも日常的に「イングリッシュ・ブレックファースト」を食べているのは肉体労働に従事している人たちです。夜を徹して働いた後、又は朝早く出勤前に早朝から営業しているカフェに飛び込むのが日課の人たち。彼らにとって「イングリッシュ・ブレックファースト」は、エネルギーをチャージするための大事な食事です。舌が焼けるほど熱々の紅茶で重めの朝ごはんを流し込み、体を温めます。


おしゃれ度はゼロですが、質実剛健、地元に根差したカフェ。こういうタイプのお店で朝早くから「イングリッシュ・ブレックファースト」を提供しています。

週末に「イングリッシュ・ブレックファースト」を食べる人たちも多いのですが、これはどちらかというと平日は会社に通う人たちです。遅く起きた朝、週末版の分厚い新聞をお店で買ってからカフェに行き、ゆっくり新聞を読みながら朝ごはんを食べる。勤め人の至福のひと時です。(※イギリスでは一般家庭への新聞配達はありません。新聞はお店やスタンドで買うものです。)

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時代と共に、おもてなし料理から家庭料理、そして外食へと変容していった「イングリッシュ・ブレックファースト」。でも変わらないのは「イギリス人は『イングリッシュ・ブレックファースト』が大好き」という事実です。

イギリスにいらしたら、「イングリッシュ・ブレックファースト」をぜひ食べてみてください。ホテルやB&Bでは必ずと言っていいほど提供しています。特に凍えるほど寒い朝に食べる「イングリッシュ・ブレックファースト」は最高です。

…と書いている私が食べたくなってきました。次の週末はお腹を空かせて、近くの食堂に食べに行きたいと思います。

ではまた1か月後にお目に掛かります。
寒くなってきましたが、どうかご自愛ください。

参照:「The English Breakfast Society」サイト

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