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皆さま、こんにちは。
ロンドンのハナコです。



8月末の現在、いままでのところ「30度超え」の日が数日連続して以上続いたのは3回程。イギリス的には「標準」の涼しい夏が継続中です。

とはいえ日本よりずっと陽は長く、蒸し暑い日も多いこの時期。天気の良い日は「ほぼ下戸」のワタクシでも庭付きのパブに行き、夕涼み(週末は昼飲み)しながらの一杯が嬉しくなります。


↑本日は夕方から晴れました。この明るさで19時半ぐらい。西日が眩しいです。

そんな「ビールの季節」に相応しいイベントに行ってまいりました。昨年に続き2年連続の参加、英国最大のビール・フェスティバル「Great British Beer Festival 2015」です。



毎年8月に行われるこのビールフェスティバルは、5日間で5万人以上を動員する夏の大イベントです。本物のエールを世の中に浸透させるために活動している団体「CAMRA(The Campaign for Real Ale)」が主催、イギリス中の醸造所から900種類以上のビールが集結しました。(「エール」については2014年3月の記事をご参照下さい)


↑ビールをサーブするおじさんたちは、皆さんボランティアです。

「本物のエール」の普及を目的とするCAMRA主催なだけあって、特にエールの品揃えが素晴らしい!イベントのですが、今回のワタクシのお目当ては「ペリー」です。

「ペリー??何ですか、それ?」

という声が聞こえてきますが、今回はその「ペリー」について取り上げてみようと思います。

<ペリーとは?>

ペリー(Perry)とは洋梨「Pear」でつくるお酒です。2014年3月の記事

「ここで少しビールのおさらいです。イギリスで「ビール」を指す場合、1)ラガー2)黒ビール(ギネス等)3)エール4)サイダー(=シードル。リンゴで作った甘いお酒)の4種類を指します。」

と書きましたが、近年ここに「ペリー」が入るようになりました。


↑ドラフトのペリー。梨で出来ているお酒ですので、色は淡い黄色です。

この記事を書いた時に、「日本ではワインのようなイメージのあるサイダー(シードル)が、イギリスだとビールのカテゴリーなの?」と驚かれました。そうなのです、サイダーはビールの仲間です。そしてペリーもサイダーとほぼ同じ製法で作られるので、ビールの仲間として扱われています。

17世紀・チューダー朝のイングランドではすでにその製法が確立されいたと言われるペリー。醸造用の梨は通常わたしたちが食べている食用の「洋梨」とは種類が違います。「Blakeney Red」を代表とする、タンニン酸が多く含まれた酸味の強い梨が使われ、この専用種の産地であるグロスターシャー、ハートフォードシャー、ウスターシャー、そしてウェールズ南部の一部の地方がペリー醸造が盛んな場所として知られています。


↑Blakeney Red種の梨

しかし20世紀に入り、ペリー醸造は下火になりました。梨は木を植えてから実を収穫できるようになるまで数年が掛かり、また収穫した梨をすぐにペリー作りに使えるのではなく、甘みが増すまで待つ必要があるなど手間が掛かります。加え1970年代~80年代に流行した火傷病が多くの果樹園を襲い、ペリーの衰退に拍車をかけたと言われています。

<ペリー再来!>

そんな1度は忘れられかけたペリーですが、ここ数年人気が高まっています。2000年初頭にサイダーブランドの大手「Magners」の先導によりサイダーのブームが起こりました。このブームにより、「サイダーの次に来るものは?」ということで、原料は違えどほぼ同じ製法で作られているペリーに注目が集まったことがきっかけと言われています。


↑イギリスで最も有名なサイダー・ブランド「Magners」

クラフトビア(地ビール)ブームが定着した感のあるイギリス、特にロンドンでは、小さな醸造所から巨大メーカー製のものまで本当に多くの種類のビールをパブやスーパーで手軽に楽しめるようになりました。ラガーやエール、サイダーに比べるとペリーの種類はまだまだ少ないのですが、品ぞろえの良い酒屋さんやスーパーでは常時数種類のペリーが置かれています。


↑Blakeney Redで作られたペリー「Gwatkin」。

<美味しすぎるのでご注意!>

さて冒頭で「ほぼ下戸」と書いた私がビールフェアに参上し、嬉々としてペリーについて語っているのはペリーが本当に美味しいからなのです。

ビールもワインも味や香りは大好きなのですが、何しろお酒に弱くて半パイント(1パイントは568ml、半パイントはその半分の284ml)で一晩持ってしまう…というワタクシです。でもペリーは通常のアルコールの倍以上飲めてしまう、という本当に危険な飲み物です。



まず飲み口が軽いのです。リンゴで作られたサイダーは甘いのですが酸味もきつく感じます(それが美味しさの1つではあるのですが)。しかしペリーはサイダーより酸味がずっと低く、梨独特のふわっと優しく、まろやかな甘さが楽しめます。

ドライなものからスウィートなものまで多種ありますが、甘さもべたべたしていなくて、梨のほのかな甘味をそのままお酒にしたようなすっきり感があります。



アルコール度数は決して低くありません。4~8%としっかりあるのですが、本当に飲みやすいためどんどん飲めてしまいます。リキュールやカクテルほど強くなく、でもワインよりは甘いこのお酒。パブ定番のフライドポテトやオリーブ等の塩辛いおつまみと一緒に飲んで+食べてを繰り返すと、下戸なはずの私が驚くほどたくさん飲めてしまいます。

<「ペリー」 VS 「ペア・サイダー」を巡る論争>

近年のペリーの隆盛を語るとき、よく引用される話があります。1995年にイギリスを代表する野外ロックフェス「グラストンベリー・フェスティバル」で、サイダー・ブランドの「Brothers」が初めてペリーを販売したところ、ペリーが何のお酒なのか誰も分からなかったのです。スタッフが「梨で作ったサイダーのようなもの」と説明すると、フェス終了時には「ペア・サイダー(Pear cider)」という名前で呼ばれるようになった、という話です。


↑Brothersのペア・サイダー。フェスティバル販売用。

その後2005年にBrothersは正式に「ペア・サイダー」として商品を発売しました。すでに定着したりんごの「サイダー」との類似性、そしてはっきり「梨(ペア)」と表記することで消費者に分かりやすく「これが何なのか?」を提示することが出来るネーミングだったため、多くのブランドが「ペア・サイダー」という名前を採用し、商品を発売するようになりました。
(参照:BBC News 「From perry to pear cider 」)

この「ペア・サイダー」というネーミングによりペリー及びペア・サイダーの存在はより知られるようになっていったのですが、そこで問題が発生!します。「ペリーとペア・サイダーは同じなのか?」問題です。

前著の「CAMRA」はペリーは「ペリー製造用の専門種の梨(通常の食用梨とは異なる)で作られたものと定義づけしています。一方でペア・サイダーは食用種の梨や梨の濃縮還元果汁も使用して作られています。


↑高級スーパー「Waitrose」で販売されているペリー。こちらは「ペリー」という名前を採用。


↑英国最大手スーパー「Tesco」が販売している缶入り。こちらは「Pear Cider」。缶入りはまだ珍しいです。

CAMRA的には「ペリーとペア・サイダーは異なるもの」なのですが、サイダー製造者協会(National Association of Cider Makers)は「梨の果汁を25%以上使用すること」という定義の元に、「ペリーとペア・サイダーは「互換性のあるもの」と呼び、つまり同じものであるとしています。


↑2つの名前を折衷したような「Perry’s Cider」。

この辺のバトル、終わりがないようにも見えますが、バトルが盛り上がればそれだけペリーへのこだわり派も増え、種類も増えていくような気がします。興味津々で見守っていきたいと思います。

今回のビア・フェスティバルではサイダーとペリーの専用ブースが用意され、常時人でいっぱい。ペリーがじわじわ盛り上がっていることを肌で感じました。


↑サイダーとペリーの専用コーナー。CAMRA主催のビアフェスなので、こちらは「ペリー」という名称にこだわっています。

まだ一般的にはドラフトではなくて瓶のペリーが主流ですが、ドラフトのペリーを提供しているパブも増えてきています。イギリスに来る機会がありましたらぜひペリーを試してみて下さい。

===

日本は暑さがまだまだ厳しいと思います。どうかご自愛ください。
こちらは9月半ばすぎにはもうジャケットなしでは出かけられないぐらいに気温が下がるはずです。まだまだ気分は夏ですが、あっという間にタートルネックの季節がやってきます。

ではまた来月お目に掛かります!

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