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みなさん、1カ月ご無沙汰しました。ロンドンの華子です。


まだまだ肌寒く、タートルネックのセーターとコートが手放せない日がほとんどですが、それでも週に1度は「16度」なんていう日もあり、少しずつ暖かい日が増えてきました。陽もどんどん伸びて、1日1日春に近付いて行く気配が漂っている今日この頃のロンドンです。

暖かくなると(暑くなると)飲みたくなるものってなんでしょうか?

冷たいビール…を連想する方が多いと思います。



イギリスを思う時、「パブでビール」を連想される方は多いはずです。実際のところ、パブではビール以外にもワインやウイスキー、他のお酒も飲めるのですが、でもパブと言えばビール、イギリス人がビール好きなことに間違いはありません。

でもね、こちらのパブで出されるビール、冷たくない物も多いんですよ。

「生ぬるいビールをつまみなしで飲めるようになったら、もう立派なイギリス人だよ」と、来英当初にイギリス人に言われたことがあります。私自身は小さなコップ1杯のビールも飲みきれない、かなーり残念な「ほぼ下戸」なのですが、少ないキャパシティを使ってちびちび飲んで味わっているうちに、生ぬるいビール1杯でパブに4時間!なんていう芸当も出来るようになりました。



周りに酒豪が多いせいなのか「1晩に5パイントも6パイント(注:1パイント=約0.57L)もぐいぐいビールを飲むのがイギリス人」という印象が強く、ビールが嫌いなイギリス人なんぞお目に掛ったことはありません(大袈裟ではありません!)。ところが、実のところイギリスでのビールの消費量は年々わずかですが下がっていのだそうです。

詳細な数字はBritish Beer & Pub Association発表のこちら↓にある通りですがhttp://www.beerandpub.com/statistics
これはビールの値段が高くなっている事と、15年程前からのワインブーム等、ビール以外のお酒の人気と関係があると思われます。

パブの数も減少の傾向にあるようで、2011年から2012年の1年間で約1000店舗減っている事が分かります。

こんなニュースを聞くと、ほぼ下戸のわたしでさえちょっと寂しい気持ちになります。この国に来て以来、「パブ」がいかにイギリス人の生活にしみつきなじんでいるかを感じているからです。

「一人でのんびりビールを飲んでほっと一息する場所」「友人と集まって、時間を気にせず1杯のビールで何時間でも話せるところ」等々用途はいろいろですが、1杯のビールさえ頼めばあとはご自由にとほっておいてくれる場所は本当に心地よいものです。

…とビールを愛する人には暗いニュースを続けて書きましたが、ここに「希望の星?!」登場の兆しがあるのです。

それはクラフトビアー(地ビール)の存在です。


↑ロンドンの地ビール「Camden Town Brewwery」直営のパブ。おしゃれな内装も人気の秘密。

日本でもアルコールの規制緩和を機会に地ビールが醸造所が増えましたが、イギリスでも2002年に小さな醸造所に対する規制緩和以後、じわじわと地ビール醸造所が増えています。数字で見ると全体のビールの1.9%ですが、2013年12月の段階で、過去1年で137もの新しい醸造所がオープンしています。

ここで少しビールのおさらいです。イギリスで「ビール」を指す場合、1)ラガー2)黒ビール(ギネス等)3)エール4)サイダー(=シードル。リンゴで作った甘いお酒)の4種類を指します。

圧倒的シェアは日本もイギリスもラガーです。缶入りの小売も、パブで販売される場合で9割以上のシェアを占めていますが、ここで注目したいのは現在約8%(2012年調べ)のシェアを占める「エール」です。



このエールもじわじわですが人気が高まっているのですが、この理由を語る前に少し説明を。

缶や瓶入りを別にして、パブで樽から直接ビールを注がれる「ドラフト(生ビール)」の場合、1)ケグ(Keg)  2)カスク(Cask) の2種類があります。

1)フィルターでろ過して酵母等の老廃物を取り除かれ、殺菌処理したビールなので日持ちする。注入のときに炭酸ガスと窒素ガスの混合ガスが混入され、炭酸ボンベの圧力を使ってサーブする。日本の生ビールはこの方式です。



↑こんな感じのステンレスの樽が一般的です。

2)ろ過や滅菌処理がなされず樽のまま出荷される。二次発酵による炭酸のみが液体に解けだし発酵が続いている状態でサーブされるため、栓が抜かれてから24時間以内に飲みきらないと味に酸味が出てしまう。


↑以前はこんな木製の樽で醸造されていたようですが、今はカスクもステンレスの樽が多いそうです。

ラガーや、日本でも飲めるギネスビールは1)の方式なので輸入が可能です。しかし2)は出荷から10日以内で樽をあけなくてはならない、温度管理や取扱が難しい等の理由から海外輸出は不可能なため、イギリス国外で飲むことは不可能。つまり、飲むならイギリスのパブに行かなくては飲めないビールなのです。

2)の方式は「カスクコンディション(樽内熟成)」と呼ばれ、この方式の元でサーブされるビールがエールです。


↑カスクはこんな木の取ってのポンプ式ハンドルでザーブされます(ガスが入っていないため、井戸式システムのサーバでくみ上げるのが昔からのシステム)。

エールは樽内発酵の時の炭酸のみなのでラガーに比べて炭酸は弱く、「発酵中」のままサーブされるため、ビールそのものの苦みや甘み、ホップやモルトの香りが楽しめるのが魅力であり、エステルという果物に似たフルーティーな香りがするのも特徴です。

さてこのエールですがずっと人気がなかったんです。きりっとしたのどごしと冷たい飲み心地のラガーの人気が上がる一方で、エールには「生ぬるくて苦い、おじさんが飲むダサいビール」というイメージがあり、消費量も右肩下がりが続いていました。しかし2007年のビールシェア率7.1%を底値にその後5年連続で記録をじわじわ伸ばし、2012年には8.3%まで上昇。輸入ビールを含まない国産ビールでは15%のシェアを占めるまでになりました(2011年調べ)。また、2012年の調査では国内約1000の醸造所がエールを製造しており、この数字は過去70年で最多の数字となっています。


↑エールのラベルをたくさん壁に貼っているパブ。数多くの銘柄のエールを取り扱ってきた事がこのパブの自慢なのです。

また別の統計では、「2010年にビールの消費が7.8%下がったものの、エールは2%しか下がらず、780万人がエールを愛飲しているが、これは2007年に比べると11%増えている(2011年調べ)」とあります。

小さな醸造所が増え、そしてエールを作る醸造所が増えている昨今。エールの地味ではあるけれど安定した人気がパブの救世主になるのでは?と新聞等によく書かれるようになりました。

これらの統計からは「皆が飲んでいるものとは違う、自分だけが知っているユニークなビールが飲みたい」という人々の思い(特に若い世代)と、生き残りを掛け特徴を出そうとしているパブや店舗側の努力が見えてきます。

そんな現在の動きをことのほか喜んでいるのが「Camra (Campaign for real ale)」です。イギリスの小さな醸造所が作るエールの伝統を守ろうと、1971年から活動を続けている団体であり、イギリス各地でイベントを開いたりエールにまつわる様々な統計を公開し、長年イギリスのエールの保護に尽力してました。

そのCamraが主催するビールフェスてバル「London Drinker – Beer & Cider Festival」が先日開催されたので行ってきました。にぎわいと圧倒的な銘柄の多さに驚きました!



入場料5ポンド、リファウンド可能なコップ(半パイント2.5ポンド)をまず買い、あとはブックレットを見ながら飲みたいビールのコーナーの列に並びます。数百と並ぶ樽、そして半パイント1.2ポンドと値段も安いのも魅力です。サーブしているのはボランティアの人たち。皆、ただただ「エールが大好き」「エールを守りたい」という気持ちだけでこのイベントを手伝っている人たちです。


↑ずらりとならぶ樽。説明書きを片手に銘柄を指定して購入します。


↑こちらのグラス(半パイント)は退場の際に返すとお金も返してくれます。1パイント用も有り。

3年連続でこのイベントに参加している友人と一緒に行ったのですが、「香ばしいおじさんばかりのイベントだよ」と聞いていたのにも関わらず、若い世代の参加者(しかも一人で来ている人も多し)や女性客も多くて驚きました。「ビール好き」が高じて、より味わい深いエールに興味を持った…という人が多い事が手に取るように分かるイベントでした。3日間開催のイベントでしたが、皆勤賞の参加者も多いそう。

↑若い世代や女性も今回多かったです。

イギリスと切っても切れないビール文化。エールが本当に救世主となり、パブ文化を含めて伝統を守り続けて行けるかは今後も乞うご期待ですが、残念ながらイギリスのエールは日本で飲むことができません。


↑エール大好きおじさん二人組の満面の笑顔。

もしこのコラムをお読みくださった方でエールにご興味を持った方がいらしたら、ぜひ1度イギリスに遊びに来て下さい。古い建物と幅広いエール、そして地ビールも置いている素敵なパブをご紹介いたします!

ではまた来月~!

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